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パリ市の学芸員の優秀さ:パリ解放博物館

  • 執筆者の写真: 百合田真樹人
    百合田真樹人
  • 2020年7月5日
  • 読了時間: 2分

パリ解放博物館(Musée de la Libération de Paris - musée du Général Leclerc - musée Jean Moulin)にようやく行けた。

  元はTGVが発着するモンパルナス駅裏に関連資料等が展示されていたものの,来館者数が年間1.2万人と少なく,2015年に2000万ユーロを投入してモンパルナス駅近く,ダンフェールロシュロー広場のにあるレジスタンスが作戦本部に使った地下壕の上に新館を整備。2019年8月25日に開館。

  向いには長い行列ができることが多いカタコンプ・ドゥ・パリ(地下納骨堂)。パリ市北部と同様に,パリ市南部のこの辺りも採石場跡が地下に広がる。この採石場跡に納骨堂が作られ,同じ採石場跡を使って,第二次世界大戦前に有事の指揮防空壕が用意され,レジスタンス活動に使われたということ。

  ナチス・ドイツによるパリ陥落(1940年6月30日)の前から時系列的に展示がされている。特別展ではパリ陥落前から陥落までのパリ市民の行動を丁寧に描いている。特別展を見ていると,どこかコロナ危機と重なって見える部分がある。すると展示の最後にコロナ危機に数十万人がパリ脱出したことを,パリ陥落を前にしたパリ市民のパリ脱出とを重ねたパネルがあった。外出制限緩和直後の展示で「危機に鈍感で,危険から距離を取る人間の行動が別の危険をうむ教訓」を結論に持ってくるあたり,パリ市の学芸員の優秀さが際立つ。

  常設展示からも得るものが多かった。特に,パリ市民が総じてナチスの占領に抵抗したという印象を一貫して否定し,多くの市民が不自由ながらも占領下で協調行動をとったことを淡々と描いている。ユダヤ人を強制収容所に送り込むことに結果的に貢献したことも淡々と描かれている。またレジスタンスで主導的な役割を担ったものの,その当人の政治的思想から解放後の評価が遅れたことについても反省を踏まえて描かれている。

  さらに興味深かったのは,レジスタンス活動とパリ解放とについても「淡々」と描かれている点。悲壮感を漂わせたり,英雄的に描いたりということはなくて,本当に「淡々」と描いている。広島の原爆資料館と長崎の原爆資料館の展示のあり方の差を若干思い起こさせる。



  パネルと展示が英語とフランス語しかないけど,どちらかがわかるなら,とてもお勧めできる博物館。 11時半に入館して17時まで。学芸員の人に「あなたまだいるの?」と喜ばれて,最後の45分は色々と教えてくれた(お腹空いてたのに)。

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