top of page

教員養成課程の教室:モナシュ大学

  • 執筆者の写真: 百合田真樹人
    百合田真樹人
  • 2020年7月3日
  • 読了時間: 3分

過去の写真を整理するなかで,他国の教員養成課程の教室環境の写真がいくつかあったのでまとめてみる。教員養成課程の教室デザインからも,その課程が養成する教師に期待するペダゴジーをみることができる。

  まずはオーストラリア。ビクトリア州メルボルン郊外にあるモナシュ大学教育学部が新設した講義棟。2017年12月に撮影。課題の発見と解決に向けた主体的な学び(アクティブラーニング)を支援する教師を養成するための理論と実践とを踏まえて,学部の研究者と協議を重ねて講義棟のデザインをしたらしい。ちなみにこの大学の教育学部長はロックラン教授。

  この3枚の写真は円形大講義室。中央天井部にモニタが設置され,スライド等はもちろん,下にある円形テーブル(上段3枚目)に置いたものが投影される。アイランド型に配置されたグループワークのテーブルにもモニターが設置されていて,そこにも同じものを投影することができる。円形講義室の周りの壁はホワイトボード。それぞれのボードに番号が振られており,番号を指定することで,ホワイトボードの内容を全てのモニターに表示できる。

  小集団のグループワークと,グループ間の対話と思考の共有を,大人数を一斉に集めた大教室でも実践する手段としてICTが活用されている。

  この2枚も大講義室。収容人数は先のものの半数くらいだろうか。講師が教室前方に立つ講義スタイルが想定されている。ただ,ここでも書画カメラテーブルが2台あって,二つのテーブルでそれぞれに指導案やプロジェクトを提示して比較検討するような指導方法が想定されている。また,こうした教室にありがちな固定座席ではなくて,コロ付きの可動型。さらに講師が学生の中央に立つプラネタリウム型の指導も想定されている。

  そしてグループワークの教室。教室間に可動式扉があって,大人数複数のグループワークにも対応。多様な学びのスタイルに合わせた可動式であるのはもちろん,座面も複数用意されている。写真にはないが,ここでも番号付きのホワイトボードがあって,講師が番号を選択することで,該当番号のホワイトボードがモニターに表示される。議論をしてそれを整理すること,そしてその内容を共有して昇華させることを想定したペダゴジーが見える教室デザイン。

  先にも書いたように,教室デザインは学部教員の対話を重ねて選定されている。こうした対話が可能な文化がそこに育まれていたことを見逃してはならないと思う。

  構成員間の対話の文化を育む工夫は,新しい学部棟でも引き継がれている。1枚目は教員も学生も利用できる学部自習室。2枚目は学部事務室を入ったところに設置されている談話スペース。簡単な打ち合わせはもちろん,自習もできる。どちらも見通しの良さが共通していて,話しかけ易く,学びの姿が目に入りやすい。デザイン次第でペアプレッシャーも肯定的に活用できることの好例。そして3枚目は(一応)教員用の台所(カフェスペース)。

  日本の大学の多くが教員研究室にそれぞれが(時に私費で)給湯設備を設置していて,共用スペースの使い方があまりうまくない。教室配置や研究室配置を考える上で,テリトリー確保の認識が強くて,戦略的思考がないんだろうなと思うことが多々ある。また「戦略」を「一方的な決定」と勘違いしてしまうような(誤った)リーダーシップという事例も多い。民主性…という点がわが国の課題だなぁと教室デザインからも感じさせられる。




Comments


CONTACT ME

Makito YURITA, Ph.D.

SENIOR RESEARCH FELLOW

Phone:

+81 03-6811-0839

 

Email:

please use the form on the left. 

  • Black LinkedIn Icon
  • Black Facebook Icon
  • Black Twitter Icon

© 2018 By Makito Yurita, Ph.D. created with Wix.com

Success! Message received.

bottom of page