top of page

備忘録:1人1台のICT機器

  • 執筆者の写真: 百合田真樹人
    百合田真樹人
  • 2020年7月12日
  • 読了時間: 4分

1人1台のICT機器導入についてコロナ前の2019年7月12日にFBに書いたことだけど,備忘録も兼ねてこちらに転載する。

 公教育現場で児童生徒1人1台ICT端末等を確保する政策。賛否両論あると思う。1人1台を前提とした費用対効果をめぐる検討点は多いが,管見する検討の視野の狭さが気になる。


 ICT端末を教室での指導につかう「指導場の活用」の国内議論のなかで,端末とサーバーの設置・設定とを組み合わせた議論が見あたらない。各教室や教科ごとのペダゴジー(教育学的指導法)の議論が圧倒的多数。ICTの教育活用を議論する段階の議論にとどまる。

 実際の導入を検討する場合は,ペダゴジーの議論も端末と端末の接続環境,ハード・ソフト両面での端末管理と保守・運用の環境を踏まえた議論が必要。ただ検討の事例は必ずしも多くない。データ集積活用をするにしても,どのデータを集積するのかはもとより,端末とデータ管理のサーバーとの関係,サーバーの設置主体や管理主体など,セキュリティとは別にペダゴジーや学校経営,教育政策の観点から検討する必要がある。


 端末を1人1台確保するための予算措置への考え方も視野が狭い。各家庭に責任を求める(貧困家庭には補助金・貸与品を支給)という考え方も示されている。各学校で児童生徒数分を確保するという考えも示されている(2019年当時)。1人1台の端末確保が目的化される一方で,活用や運用を踏まえた検討が少ない。

 あまり検討されてないみたいだが,児童生徒の使う端末はまぁ壊れる。

 各家庭に端末準備を求めるならば,1年を超えて活用する事は無理筋。各学校に端末準備を求める場合でも,保守管理責任者が各学校に最低1人は必要。これも現有の教師を肩書だけの「保守管理責任者」に充てるのではなく,エンジニア(贅沢を言えば教育工学等のペダゴジー領域の専門性を併せもつ専門家)を新規採用枠として各学校に最低1人,そして児童生徒数に応じて増員する人事措置が必要だと思う。


 いずれの場合でも,ICT導入を具体化する審議委員会等では,一部先進校の事例ではなくて全学校区で導入・活用されている事例調査を踏まえるべきだと思う。

 シカゴ学校区(児童生徒数381,000人)やヒューストン学校区(同214,000人)などは特にいい事例になると思う。それぞれに経済格差や機会格差に基づく学力格差の課題が顕著。そして大都市部と衛星都市部,郊外区とを有し,教育領域でのフィールド研究にも積極的で,ICT導入後の実勢データも集積している。児童生徒の端末がどの程度の保守点検が必要で,どのようなハード面の問題がおこるのかのデータもある。

 ヒューストン学校区では企業との連携も密で,児童生徒の利用データの企業との共有も一部実施されている。端末導入に関連した企業体との連携についても,その法整備や協働のあり方,及びそこに至る検討プロセスなども調査すべきと思う。

 さらに端末導入・保守管理・活用にとどまらず,学びのデータ活用や教師間協働や研修を組み込んだシステム設計をしている学校区もある。せっかくの「後追い」なのだから,先行事例から学ぶのが肝要だと思う。


 詳細をここに書くのは避けるけど,わが国の教育政策環境や教育情報市場に構造変化を生むチャンスと捉えることもできるはず。現状の議論では,思考のパラダイムは広がらず,構造変化のチャンスととらえることは無理筋だろう。


 関連企業の収益も無視できない。金の話は汚いと言われるけど,経済活動を考慮に入れない議論は別に純粋でも高潔でもない。経済活動をめぐる諸事象を考慮するとともに,その公正さと利益の最大化を考慮に入れた議論をすることが高潔だと思う。諸外国の事例をもとに,わが国の義務教育児童生徒数で端末導入コストをみるとおよそ185,302百万円。教育情報関連大手のB社の平成30年3月期の売上高(国内教育関連領域のみ)192,064百万円を下回る。

  B社の数値で考える事由は,米国等でのモバイル端末導入をめぐる幅広い活用のあり方を,先入観抜きに検討してくれれば自ずから見えてくるはず。そうすれば端末導入コスト云々よりも,コスト負担を誰に求め,端末活用の継続性が産み出す莫大な金鉱を確実に見極め(先行事例調査),金鉱利用の公正性を確保する法整備を検討するような方向性が加わることが求められると思うね。

Comments


CONTACT ME

Makito YURITA, Ph.D.

SENIOR RESEARCH FELLOW

Phone:

+81 03-6811-0839

 

Email:

please use the form on the left. 

  • Black LinkedIn Icon
  • Black Facebook Icon
  • Black Twitter Icon

© 2018 By Makito Yurita, Ph.D. created with Wix.com

Success! Message received.

bottom of page