週末にボルドーへ
- 百合田真樹人
- 2020年6月29日
- 読了時間: 3分
更新日:2020年7月2日
週末にボルドー(Bourdeaux)まで足を伸ばした。往路はTGVを利用。パリのモンパルナス駅から片道2時間強で到着。
6月末は通念なら観光シーズン。ただCOVID-19で国境を越えた移動が制限されるなか,ボルドーにも観光客の姿はない。レストランのウェイターも,ここ数ヶ月はフランス語でしか接客してないと話していた。観光客で溢れかえっていないフランスの街をみる最初で最後の機会かもしれない。
ボルドーは古都ではないけど古都の雰囲気がある。12〜15世期まで英国領。17世期に奴隷とスパイスの三角貿易で栄え,その後にワインの商取引で栄えた河川港湾都市。ボルドーが奴隷貿易の歴史に向き合ったのは21世紀に入ったころ。現在は市長やその他公職の方々が連名して市の負の遺産に向き合う象徴を見つけることができる。完璧でもないのに完璧を装うと見苦しくなるのは人間も歴史も同じ。負の遺産を積極的(+建設的)に認知(およびその工夫)した方が,総合的にも結果的にも良い方向に向かう。少なくても、過去のあり方や過ちからの向上を図る現在の姿を示すことになる。
旧石器時代からのボルドーの歴史を収集展示するアクイタニア博物館にも,ボルドーの奴隷制をめぐる展示があった。特に興味深かったのは,ボルドーの知識層が奴隷制をめぐって制度の維持や正当化のために交わした議論や出版物の展示。それぞれの議論の要旨を整理して展示されていた。
ボルドーはワインの街なので,ワインの博物館もある。そのなかでもシテ・デュ・ヴァン(La Cité du Vin)は,2016年に開館し,多くのメディアが取り上げるボルドーのランドマーク。建物の意匠も斬新で,ICTを多用した展示がある。入館料は1杯の試飲付きで20ユーロ。ただ,これまで訪問したどの博物館よりも酷い博物館。
イノベーションやインタラクティブを枕詞にした展示の失敗例。来館者が画面に触れるインタラクティブな展示もいいけど,画面に触れることだけではインタラクティブとは言わない。仰向けに座れるソファから,天井に映された印象的な音楽と映像をみるのはいいけど,10分程度の映像で伝えた内容がワインと愛(ほんとそのまま)なら展示じゃない。
3D的映像で歴史を紹介する展示もモニターの高さがバラバラ。子供と大人で内容的に分けるためなら合理的だけど,そうでも無い。箱型の奥まったところに画面があるので,しゃがまないと何も見えない。展示にも内容がなくて,インタラクティブ(を想定したと思われる)な要素も子供でも飽きると思う。
一方で,葡萄酒とネゴシアンの博物館(Musée du Vin et du Négoce de Bordeaux)は,小さなワイン商のセラーをつかった展示室。ガイドがボルドーのワイン商の歴史を含めて丁寧に説明してくれる。展示品こそ少ないけど,物語があって学びが多い。なぜか販売してるワインを2本お土産にくれて,ちょっと頭が混乱した(おどろいた)。結構な頻度でこういうことがある。
夕食はInfluencesというレストランへ。メニューは3コースか5コースかを選ぶお任せタイプ。それぞれの料理に合うワインをセレクトしてくれるワイン・ペアリングのオプションがある。初めてワイン・ペアリングをお願いしたら,ワインと料理の組み合わせの妙義に驚いた。いちばんの驚きはデザートとの組み合わせ。甘味を抑えたフルーツと甘口のデザートワインの組み合わせで,香りと甘さがびっくりするくらい引き立つ。ワイン・ペアリングはちょっと高いかな…と思うけど,これからも試してみる価値がありそう。
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